第17回エシカルインタビュー<茨城県立下妻第一高等学校(下妻市)>
茨城県内のエシカルな取組を紹介する「エシカルインタビュー」。
今回は、廃棄されてしまう衣服をアップサイクルしたファッションのショーを通じて、SDGsの体験型学習を行っている県立下妻第一高等学校を訪ねました。
エシカルな活動を「クールで魅力的な自己表現」として捉えるこの取り組みは、エシカル消費がポジティブなものとして選ばれる未来を期待させます。
「アップサイクル・ファッションショー」について
下妻市にある県立下妻第一高等学校では、2024年から「アップサイクル・ファッションショー」を開催しています。
指導を行うのは、国語科教諭でもある探究推進部の渡辺和香先生。小論文の指導を行う中で、生徒たちはSDGsやアップサイクル等の社会課題に関する言葉は知っていても、体験が伴わないため、「理解が十分に得られていない」、「自分ごとにならない」という問題意識を抱かれたそうです。
体験を通して学ばせることが効果的と考えていた渡辺先生は、ある時、プライベートで着物のアップサイクル・ファッションショーを鑑賞した際に「これだ!」と閃いて、ショーの主催者に「本校でもやって欲しい」と直談判されました。
「ショーの衣装はパリコレ(パリ・ファッションウィーク)でも着用されたほどのものですし、今思えば無謀なお願いだったと思いますが、生徒たちの学びのためにと無我夢中でした」と渡辺先生は当時を振り返ります。

<2024年開催のアップサイクル・ファッションショー>
初回はモデル体験を通してアップサイクルを体験
和服は、海外では「持続可能性の高い被服文化」としても高く評価されています。2024年7月、同校の文化祭内で初めて開かれた「アップサイクル・ファッションショー」で、生徒たちはショーへの参加を通し、その文化を楽しみながら学びました。
ショーでは約40名の生徒がモデルとして参加し、プロのモデルとともに、パリコレでも登場した一流デザイナーの衣装に袖を通し、颯爽とランウェイを歩きました。
また、生徒はウォーキングだけでなく、着こなしのアレンジやリサイクル素材を使ったアクセサリーのコーディネートなど、大勢の観客を前に思い切った自己表現にも挑戦しました。
この活動の後は、空き家の再活用などアップサイクルの概念を他の分野にも応用して、自発的な探究活動を始めている生徒もいるそうです。

<一流デザイナーの衣装でステージに立つ生徒たち>

<プロデザイナーのアップサイクル衣装やリサイクル素材のアクセサリーでコーディネート>
受け継がれ、広がる活動の輪
「来年もやりたい」との生徒たちの声に押されて、2025年6月に2度目の「アップサイクル・ファッションショー」を開催。大丸松坂屋百貨店が実施するアップサイクルの取り組み「roop」とタイアップしました。
2度目の「アップサイクル・ファッションショー」にはモデルを含めて72名もの生徒が参加し、今回はモデルだけでなく運営スタッフも担いました。演出、メイク、ヘアセット、舞台設営、観客誘導などの裏方業務も生徒が分担。アナウンサー志望の生徒が司会を務めたり、実家が美容室の生徒がヘアメイクを担当したりするなど、各自が得意分野で活躍しました。
また、ショーの前には、生徒が洋服の大量廃棄問題について調べた内容を全校生徒に向けてプレゼンする時間を設け、社会課題への意識喚起も図りました。
「準備期間中のインフルエンザの流行や、本番直前のモデルの怪我といった不測の事態に対し、生徒たちは自ら考えて臨機応変に対応する力を身につけました。生徒たちは多忙な部活動と両立させながら、予想以上の成果を出してくれたと思います。生徒たちの潜在能力は素晴らしく、大人が限界を設けず信頼して任せることが重要ではないでしょうか」と渡辺先生は感慨深げに語ります。

<「roop」とのタイアップで開催された2回目のショー>

<72名もの生徒が参加>
今後の展開について
この活動は、生徒にとって忘れ難い青春の思い出となり、将来どの分野に進んでも「地球環境に良いか」という判断基準を持つきっかけになると思われます。
同校ではこの活動の他に、新たに地元産業と連携した実践型探究授業も始まりました。授業では規格外で廃棄される下妻市の梨「恵水」を活用し、ふるさと納税の返礼品のコンポートゼリー開発のお手伝いと、その返礼品のWebページデザイン作成に、取り組んでいます。このプロジェクトの指導も、渡辺先生が行なっています。
「生徒たちは市役所や企業と連携し、ECサイトのページ作成やイベントでの販売活動に取り組みながら、理論と実践を結びつけて学んでいます。
また、ファッションショーについては、先輩の姿を見た後輩たちが『もっとアップグレードしたい』と意欲を見せています。このショーが当校の代名詞になれるように、生徒たちの要望がある限り、私もできる限りのことをしていきたいです。」と、奮闘を誓う渡辺先生でした。

<指導を担当された渡辺和香先生(後方左から3人目・緑と白の着物)>
●茨城県立下妻第一高等学校
アクセス 茨城県下妻市下妻乙226-1
電話番号 0296-44-5158